晴鉄雨読

晴れの日以外はカメラを握らず。雨なら家で読書をば

55.横川より、峠の記憶を呼び覚ます

2023.12.16 碓氷峠鉄道文化むら(ナイトパーク営業日)

冬の高崎支社のELはたいていの場合運転本数が少ないというのが毎年の流れだ。今年もその例に漏れず、ELぐんまよこかわの設定はこの日のナイトパーク号のみであった

運転本数が多い春、夏と撮影に徹してきた私からすると冬は他シーズンに比べて運転本数自体も見劣りするうえ、夏よりも良い光線状態なのにもかかわらず日中の撮影ができる時間帯に列車の設定がないという条件の悪さも相まって全く撮影の気力が湧かなかった

ならば、ということで今回は普段の被写体に実際に乗ってしまうことにした。撮影は春までお預けである

メインは乗り鉄とはいえそのまま横川に行くだけ行って帰るのはもったいない。せっかくナイトパークをやっているのだから楽しまないという手はなかろう(というよりも遠くまで来て何も撮らないで帰るというのは不戦敗という気がしてなんだか気持ちが落ち着かなかったというのが本当のところなのだが)

そこで今回私が狙うこととしたのは通常では見られない宵闇を走る峠のシェルパことEF63。普段の開園時間ではとても見ることのできないような夜の闇を切り裂くロクサンが特別に撮影できそうだというならば喜んで行こうじゃあないかと一念発起し横川の地へと向かったのである

分かってはいたものの実際に来てみるとなかなかのものだった。留置線のロクサンはさながら次の出番を待つ現役機のようでYouTubeで見たような光景が実際にそこにあるというのはなんと贅沢なことか。そんな夢のような光景とともに夜のロクサンを撮る事に決めた

どうやらロクサンは夜の運転体験という名目で何往復か運転されるらしいということだけがわかっていたが、いつやって来るやらわからない。自分が情報弱者であることを呪いたい気持ちも山々なのだがそれより心配なのは明るさである

被写体は当然のことながら動いているので気合の13秒で撮影!というわけには当然いかないわけで、だいたい1/20くらいでも被写体が見えるくらいの明るさは担保したいと思っていた。それだけに明るさの制限もシビアである。そんな状況でどんどん暗くなる辺りの景色を見ながらなんとか撮れるか撮れないかやきもきしていると軽井沢方面へロクサンが登って行った。

まだ間に合うかもしれない。と急いで設定を回し、何とか撮れるように!と祈りながらファインダーを覗く

すると今度はまさに今軽井沢から峠を下ってきたようなロクサンが画角へと入ってきた。夜の帳が降りきる頃、峠の記憶を呼び覚ます汽笛が横川の町に鳴り響く